会計をしたときにね、これから女性と会うんですよといえば、
バーテンダーはお客さまの手にジンを数滴たらしたんですよ。
こするとアルコールがとんでアロマだけが残るから。
バーはキザが似合う唯一の場所。
でも最近は居酒屋みたいなところが増えたね。
30年ほどまえ、その店のマスターによく聞いた話です。
店の灯りがともっていますよ。
そんな声を聞いて、半信半疑で階段をあがると
1日3時間限定でオープンされていました。
扉をあけるとそこは昔ながらのオールドボトルとリキュールの森。
「ボビーズ・バー」。
マスターの千頭さん、御歳91歳!
昨日も今日も、そして明日もひとりで店の掃除をして、仕込みをし、
カウンターに立ち、酒を作り、酒場を語る。
戦後すぐの頃からバーテンダーをされていた千頭さん。
その話はまぎれもなくひとつの大阪酒場史。
聞いているだけでワクワクします。
しかしその一方で、いまでも日々、淡々と、酒を作る。
助手を雇わず、自分で店のすべてをする。
酒はスピリッツとも書くように、
その変わらぬ職人魂に酔わされます。
手本というにはおこがましい。
しかしめざたい姿がカウンターの向こうにある。
元気と希望をいただきました。
とりあえず年内いっぱいとのこと。
それまでは千頭さんの酒と話を伺うために
あの階段をあがります。